2005年12月12日

長文御免。小京都雑感

 以前、「京都げのむ2号」の特集で、京都の問題物件を扱ったことがある。問題物件とは、古くは京都タワー、近年だと京都ホテルやモヒカン山など、大概は京都の「景観破壊をひきおこす」物件たちである。

 ただ、これらは、建設決定の際、もっとも脚光(猛烈な反対を受ける)を浴び、それをピークにして、完成後しばらくしたら、全くさわがれもしない奇妙な輩で、京都の風景になんとなく馴染んでしまう(京都ホテルを見よ!)のである。

 このことから、京都の景観なんてものは、単なる幻想に過ぎず、その幻想を維持し続けるためにこそ、問題物件が必要とされるのではないか、という結論を「げのむ2号」では下していた。要するに、建設反対運動に熱狂することで、あたかも守るべき美しい風景があるかのような幻想を抱くことができるというわけである。

 では、京都の景観、都市構造を何らかのかたちで模倣した小京都なるところでの事情はどうなのだろう。今年、秋田県角館(かくのだて)という、東北地方の小京都で仕事をする機会があり、その町がおかれた状況にナマで触れてしまった。

 角館は小さな城下町であり、北と東に山、西には川(京都の鴨川にあたる)があり、山の名前も華頂山など、京都にちなんだものがあり、まさに京都をモデルとした町である。また近世に計画された都市骨格(街路幅や町割りなど)がほとんどそのまま残されており、そのことがこの町の性格と美しさの源泉となっていた。

 では、そこに問題物件が建設されるとどうなのだろう。京都のようであるなら、問題物件を「いけにえ」に、ひらりと身をかわしながら幻想を振りまくはずであるが、、。

enkei.jpg

 結果は最悪である。写真後方に見える円形レストランを備えた、この町でひときわデカいホテル建築(20年前に完成)。街区スケールをあきらかに逸脱し、南北3キロ程度、幅1キロ程度しかない、この町では、まさに宇宙からやって来た最凶怪獣のごとくに大暴れである。どこから町を見てもその「醜悪な姿ビーム」にやられてしまう。

 また、町南半分の町人街の典型的な建物であった町家も、現在では数えるくらいしかなく、これも京都以上に、ひどく目につく。

 さらには、保持されてきた都市骨格にも手が入る。町のなかで中規模くらいであった道路の1本がゴリゴリに拡幅され、その道に面した建物は全て解体新築を余儀なくされた。単なる幹線道路としての拡幅は、かつての都市構造のヒエラルキーと無関係であり、その薄ら寒い風景は町を絶対零度と化す。

 この道路拡幅にともない、僕の父の生家(といっても僕はほとんど探訪したことがない)も解体する運命にあったのだが、無理矢理、曵くことにした。おんぼろな町家なのだが、これを潰すと、この通りに面する町家は0軒となってしまうので。僕の仕事とは、おんぼろ町家を曵くことと、その結果一部解体した部分に小さな増築をほどこすことであった。

 それはそうと、小京都と京都はまるで違う。まずは、京都は現代都市であるが、少なくとも角館は都市ではない。だから都市スケールの新陳代謝を受け付ける体力(語弊があるなら骨格と内蔵)など、はなからないのだ。

 また先ほどの道路拡幅は、角館の観光目玉である武家町のメイン道路を無電柱化、かつ、完全歩道化(アスファルトもはがす)するための、代償行為であるのだが、観光の「ハイライト地区」と、その他部分を分離するほどの体力も、やはりないのである。結晶化された骨格こそがこの町の全てであったといっても過言でないほど、小さな小さな町なのだ。

 しかし、小京都は京都に対する憧憬がある。これは憶測ではあるが、「京都では、新しい大きな建築がいっぱいあるよ」「町家だけでなく新たな家もいっぱいだよ」「ハイライト地区と、そうでないところをうまく使いわけてるよ」なんていう、現代都市:京都の模倣が、そこにはあったのではなかろうか。現代都市でもない、小さな体が誇りの町であったことを忘れて。

 小京都の問題物件は、京都と違い、本当に問題物件である。そして、京都の問題物件の問題は、京都における問題ではなく、それが小京都に「移植されること」にこそあるように思われる。小京都は腐っても京都を本家と思うべきか、親離れして自分を見つめ直すか、早急に決断せねばならないだろう(もう手後れな部分も多いが)。

gaikan.jpg

↑ 曵いた、おんぼろ町家の外観。切妻妻入り、下方に下屋がつくのが、この町に典型的な町家。この道路沿いには町家はもうない。後ろ上方に突出する屋根は増築部分の上屋である。

zochiku.jpg

↑ 曵家後方に増築された部分の外観。


posted by zukan at 16:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 所感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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